Art Basel Hong Kong #4

05 May 2018

こんにちは。

4つ目に紹介するのは、3日目に訪れたQuarry Bay にある、「Para Site 藝術空間」です。

こちらのギャラリーは、ビルの22階にありますが、大きな看板もないのでとても分かりにくいです。

次回行くときに場所が分からなくならないように、念のため写真を撮っておきました。

さて、このPara siteで行なわれていたのが、「A beast, a god, and a line」という展覧会。
57組の東南アジアを中心とした、現代に限らないアートの展覧会です。

このPara Siteは、もともと香港の現代アートをけん引する最初の独立した集団であり、アジアを中心に最も活躍している集団でもあります。
彼らは、アートと社会の中の地域性と国際的な現象に対するクリティカルな理解を形作るための展覧会や、出版、談話や教育プロジェクトをプロデュースしています。


<写真:Para Site Webサイトより>

同時期に開催されているArt Basel とはある種対極の立場を取り、
香港では現代アートに対するクリティカルで具体的なアクションをしているということとても注目されていることが伝わります。
私自身も彼らの活動に対し共感します。何と言ってもクール&スマート。
こんな活動をできるのも香港ならではでしょうか。

では、なぜ彼らの活動が注目的なのでしょうか?

今回行なわれていた「A beast, a god, a line」は、そのままですが中国語(広東語)で「一獣、一神、一線」と訳されます。
展示されていたアーティストの作品は、どれも民族性やこれまで東南アジアの地域が歩んできた歴史やそれに対する考えを表しています。

<Raja Umbu – Skirt with Kadu motif depicting the arrival of ancestors to the Island of Sumba / Indonesia / 2010>

Jrai Dew Collective 2016>

<Jakrawal Nilthamrong - Zero Gravity (無重力) / Thailand / 2013>

こちらはタイとミャンマーの国境の歴史をたどる映像です。
クリスチャンの”God’s Army”と呼ばれるミャンマーの12歳の子供が銃を持ち、たばこを吸い、笑いながら無防備な人質の婦人に銃口を向ける姿。
実際にあった実話に基づくインタビューとフィクションを織り交ぜる形で構成されています。
ここで上映されていた動画もVimeoで発見できました。上のタイトルにリンクを貼っているのでそちらからご覧になれます。

Joydeb Roaja – Searching My Roots / Bangladesh / 2017>

Sheelasha Rajbhandari – My Great-Great-Grandmother’s Shawl / Nepal / 2017>


こちらは、伝統的なネパールの文化が大きく変わったことを示しています。
おばあさんの来ているショールはネパールの伝統的な模様と技法で作られています。しかし、現代に生きる彼女(作家本人)の来ているショールは安もののワッペンでおおわれています。
この比較が示しているのはどういうものかは想像がつくと思います。

Ming Wong 黄漢明 – Bloody Marys-song of the South Seas / Singapore / 2018>

Malala Andrialavidrazana – Madagascar / 2015-2016>

Simryn Gill – Sweet Chariot / Singapore / 2015>

Simryn Gill – Pressing In / Singapore / 2016>

Idas Losin 宜徳思・蘆信 – Traveler, Rano Raraku, Moai, Island, Ku / Taiwan / 2014-2017>

Simon Soon 孫先勇 – Malayu Pono’i / Malaysia / 2018>
Simon Soon – Para Site International Conference 2015

この展覧会は、過去数十年間にグローバリゼーションを形作ってきた
西洋の自由主義民主主義の理想と確実性に対する一般的な信用の喪失と、それに対する問題提起をしています。
統一主義的な思想が崩れたこの10年のその後にはどんな出来事が起こるのか、それらからもまだ身を守るべきなのか。

現代美術はグローバリゼーションを特権的に表し、本質的に地域性を感じる作品によってむしろ逆説的にそれを表現してきましたが、
この展覧会ではある意味をそれを拒絶するような態度を示しているようです。

現代美術のイデオロギー的基盤が崩れている状況において、現代美術の美学的基盤はどのようにこの状況を説明できるのか?
異なる、相反する系譜の作品が共有された展示スペースでは、それらをどのように位置づけることができるのか?

その答えは観る側に委ねられているような気がします。

今回のテキストで Art Basel 香港の考察に一区切りをしたいと思います。
もしかすると、もう一投稿くらいするかもしれませんが…。

Art Baselの時期には、周辺のギャラリーではそれに連動した展覧会がいくつも開かれていました。
Pedder Streetのギャラリーはもとより、新しくできたH Queen’sビルにあるギャラリーなどは、ビル一棟がほぼギャラリーということもあり、
とても見応えと楽しみがあります。
香港では都市の中心部でゆっくりとギャラリーをはしごできる環境が整っているので、
例えば休日など気軽にギャラリー巡りに出かけやすいのかと思いますし、それが何よりも素晴らしいと思いました。

ちなみに、Quarry Bay(鰂魚涌)は、ギャラリーが密集しているCentral(中環)から7駅程の距離です。
少し離れているので、喧騒から離れてゆっくりと楽しむにはちょうど良いですね。
ちなみに、Loof topからは、ビクトリア・ハーバーが見渡せます。

香港に行かれたらぜひ訪れてみていただきたいです。

@Quarry Bay
Gallery: Para site
Title:A BEAST, A GOD, AND A LINE
MAR 17 – MAY 20, 2018
Para Site
22/F, 6/F Wing Wah Industrial Building

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